【物語】
唯一神(アッラー)の啓示を受けたムハンマドはその教えを広めるが、マッカの支配層に迫害されてしまう。
信徒たちとマディーナに移住した彼はイスラーム共同体を結成、やがてマッカを治め、アラビア半島を統一する…。
【解説】
7世紀に誕生したイスラームの起源を描く歴史大作です。預言者ムハンマドの姿は描かれず、その叔父ハムザを中心に物語が展開します。日本でも公開された英語版とは別にアラブ世界向けのバージョンとして作られました。
【物語】
メディアチームを結成し、「西サハラ」の実態を世界に発信するサハラーウィたち。
武力闘争で占領者モロッコに圧力をかけることを望む若者もいる中、活動家アミーナートゥ・ハイダルはあくまで非暴力の闘争を訴える…。
【解説】
1975年にスペインからの独立過程でモロッコに侵攻され、領土の大半を占領され続けているアフリカ北西の「西サハラ」。
現地で命懸けの抵抗運動を続けるサハラーウィたちの焦燥と葛藤を描いたドキュメンタリーです。
【物語】
爆撃で家族を失った8歳のリナは、幼い妹を連れ、隣人のマリヤムや友だちの家族と一緒にイスタンブールへ避難する。
シリアに帰りたがるリナは何かとマリヤムに反抗するが、ある朝全員で住み処を追い出されてしまう…。
【解説】
実際に難民の少女が主人公を演じている作品です。
幼い妹を必死で守ろうとする少女と、彼女を懸命に世話しようとする女性の物語が、“数”でしか伝えられないシリア難民それぞれの人生や尊厳について考えさせてくれます。
【物語】
42歳のアブー・ジャイヤブは、若者たちにサーフィンを教えている。
23歳のイブラヒームは、いつかガザでサーフショップを開くのが夢。そして15歳のサバーフは、子どもの頃は父親にサーフィンを教わっていたが…。
【解説】
イスラエルによる封鎖が続くガザの人々の現実を、サーフィンを通じて描いたドキュメンタリーです。
天井のない監獄のようなガザの窮状や保守的な社会に夢を阻まれながらも、人間らしく生きる彼らの姿に希望が湧きます。
【物語】
毎晩求めてくる夫に困り果て、一夫多妻の教義にのっとり2人目の妻を探す女性。
一時婚の規範を利用して、不倫関係のような夫婦となるカップル。そしてすでに二度離婚している若い夫婦は、嫉妬深い夫のせいでついに…。
【解説】
シャリーア(イスラーム法)に基づいてそれぞれの愛や夫婦間の悩みに対処しようとする人々を、ユーモア交じりに描いた作品です。
ムスリム社会の婚姻規範に驚きつつも、女性の苦難や男の身勝手さは万国共通に感じます。
【物語】
ある日グレイスは大伯母から、彼女の父(曾祖父)が家族を置き去りにして、アルゼンチンではなく故国レバノンで他界したことを聞かされる。
やがて大伯母の死に突き動かされたグレイスは、曾祖父の足跡を追い始める…。
【解説】
ブエノス・アイレスに暮らすレバノン移民の末裔の女性が、曾祖父の人生を追ってレバノンを旅する姿を描いたドキュメンタリーです。
1万キロ以上の距離と、長い年月を越えてつながる二つの家族の物語に胸を打たれます。
【物語】
1966年、夏のラグレット。アラブ人でムスリムのマリヤム、ユダヤ教徒のジジ、そしてクリスチャンのティナ。
同じアパートの同じフロアで家族とともに暮らす3人は、この夏に初めての体験をする相手を探していた…。
【解説】
第三次中東戦争前の海辺の町ラグレットを舞台に、宗教も出自も違う3つの家族のひと夏の日々を軽妙洒脱なタッチで描いた作品です。
チュニジア出身の俳優クラウディア・カルディナーレが本人役でゲスト出演しています。
【物語】
宇宙飛行士を夢見て、毎日のようにプラネタリウムへ通うアキラ。
彼女はイギリス人留学生ジューンと、科学をテーマにしたコンペで競い合うことに。一方、祖父は彼女に黙ってイギリスの天文台で働くことを決めていた…。
【解説】
前作に続き、バンドン工科大学のサルマン・モスクが“イスラームと科学”をテーマに製作しました。
インドネシアを飛び出してロンドンでも撮影が行われ、アキラの宇宙への憧れが、壮大なイスラーム観とともに描かれます。
【物語】
ラホールでポップデュオを組んでいる兄弟。だが、弟が過激な原理主義に染まり楽器を棄て、兄は弟を心配しながらもNYに音楽留学する。
一方、ロンドンに住む従妹のマリアムは、英国人との結婚を快く思わない父親に…。
【解説】
ジハード主義者と穏健なムスリムの軋轢や、欧米に蔓延するイスラーム嫌悪など、“9.11”以降のイスラーム社会が抱える葛藤をパワフルに描いた社会派ドラマです。
パキスタンで大ヒットし、一大社会現象となりました。
【物語】
ムスリムとクリスチャンが半数ずつ暮らすレバノンの小さな村。
戦争がようやく終わり、女たちは胸をなで下ろしていたが、男たちはすぐに諍いを始めてしまう。
村の平和を守ろうと、女たちはあの手この手と策略を練る…。
【解説】
昨年『存在のない子供たち』がヒットした、ナディーン・ラバキー監督の日本未公開だった第2作です。
長い内戦を経験したレバノンの歴史を背景に、平和を守るための女性たちの闘いが、寓話的な悲喜劇として描かれます。
【物語】
ケーララ州の農村に暮らす、アブとアイシュンマの夫婦。
2人はマッカへの巡礼ハッジのため、つましく資金を蓄えていた。
息子は中東に移住したまま帰ってこない。アブは街の旅行会社まで、パスポートを作りに行く…。
【解説】
ムスリムの老夫婦を主人公の、信仰についての物語です。
彼らと善意ある人々との交流を通じ、宗教を超えた人間同士の愛と宥和が謳われます。
映像や古典楽器を使用した音楽も美しく、数々の映画祭で高く評価されました。
【物語】
五人姉妹の末っ子パサンドの婚約式の準備が始まる。
海外に暮らす婚約者は不在のままだが、姉たちは祝宴を開くため大忙し。
パサンドの結婚に反対していた伯父もようやくそれを受け入れ、黙々と角砂糖を作っていたが…。
【解説】
婚礼の祝いに集まった大家族の悲喜こもごもを描く群像劇です。
様々な人生を背負って生きる人々の心情が丁寧にすくいとられ、胸に沁みます。
イランの伝統的な家屋や家庭料理など、豊かな色彩にため息がもれる逸品です。
【物語】
幼くして結婚したヌジュームは、ある朝家を飛び出して裁判所へ駆け込み、離婚したいと訴える。
驚く判事を前に彼女は、歳のかけ離れた夫の暴力に耐える日々と、自分が嫁に出されるまでの経緯を語り始めるのだった…。
【解説】
実話を元に、作者が自身の経験も反映させた、“児童婚”に抵抗する少女の物語です。イエメンの美しい風景も描きながら、児童婚が宗教や因習だけが原因ではない、
普遍的な女性の権利の問題であることも教えてくれます。
【物語】
幼くして結婚したヌジュームは、ある朝家を飛び出して裁判所へ駆け込み、離婚したいと訴える。
驚く判事を前に彼女は、歳のかけ離れた夫の暴力に耐える日々と、自分が嫁に出されるまでの経緯を語り始めるのだった…。
【解説】
実話を元に、作者が自身の経験も反映させた、“児童婚”に抵抗する少女の物語です。イエメンの美しい風景も描きながら、児童婚が宗教や因習だけが原因ではない、普遍的な女性の権利の問題であることも教えてくれます。
【物語】
11歳のアフメド、8歳のリマ、9歳のユースフは、内戦下のイエメンに生きる人々の声を集め始める。
彼らは負傷したり、親を失った子どもたちの他、画家やラッパー、SNSの人気モデルにもインタビューしてゆく…。
【解説】
“世界最悪の人道危機”が続くイエメン。
メディアの取材が困難な中、現地の人々の声を収めた貴重なドキュメンタリーです。子どもたちの視線が、戦争の不条理と、それを止められない国際社会の無策を浮き彫りにします。
【物語】
“アラブの春”を取材すべくイエメンに入った作者は、現地の観光ガイド、カイスと出会う。
ビジネスに支障をきたし、反政府デモに懐疑的なカイスだったが、デモ隊に発砲する政府の姿や死傷者を見て考えを変えてゆく…。
【解説】
その後の泥沼の内戦など想像もできなかった、“アラブの春”当初のイエメンを描いたドキュメンタリーです。
革命に翻弄される主人公に寄り添いながら、作者もまた、うねりを上げて激変する世界に巻き込まれてゆきます。
【物語】
シリアからトルコに逃れたものの、最愛の母も失い、シャンルウルファの孤児施設に引き取られたイーサ。
彼はそこで同じ境遇のアフマドとモアタズに出会う。3人は各自の目的のため、街でティッシュ配りを始めるが…。
【解説】
実際の難民の子どもたちが演じています。内戦に大切な時代を奪われた彼らの悲しみに、胸を打たれずにはいられません。
自身もユーゴスラビア内戦を経験したムスリマの監督が描く、痛ましくも優しさに充ちた物語です。
【物語】
地元サッカーチームのマネジャーを務めるマジード。
ナイジェリアから招聘した選手サミュエルの活躍で彼のチームは快勝するが、ある日サミュエルは怪我を負ってしまい、マジードは自宅で彼の世話をすることになる…。
【解説】
ナイジェリア出身なのにスーダン人だと思い込まれるサッカー選手と、所属チームのマネジャーとの友情を描く人情コメディです。
アフリカの若者とケーララのムスリムコミュニティの交流が、温かな笑いと涙を誘います。
【物語】
科学が大好きな小学生のアキラは、自由研究のため、天文学者の祖父に研究所の大望遠鏡で星を見せてほしいとお願いする。
祖父はクルアーンをアラビア語で朗誦できるようになることを条件に、アキラにそれを許すが…。
【解説】
“イスラームと科学”をテーマに、バンドン工科大学のサルマンモスクが製作した子ども映画です。
イクロとは、クルアーンをアラビア語で詠む練習法を指します。 子どもたちの学びと成長がおおらかに描かれる作品です。
【物語】
パレスチナのある町の人々が、それまでイスラエルから買うしかなかった牛乳を独自に生産しようと、18頭の乳牛を“合法的”に手に入れる。
しかし、イスラエル当局は牛を“国家の脅威”と見なし、その摘発に乗り出す…。
【解説】
第1次インティファーダの契機となった逸話を、関係者の証言のみならずクレイアニメや再現ドラマも交えて描いた独創的なドキュメンタリーです。
複雑なパレスチナ問題を身近に感じさせる斬新な語り口に驚かされます。
【物語】
1975年。西ベイルート(ムスリム地区)に住むターレクは、東ベイルート(クリスチャン地区)のフランス学校に通っていた。
しかし内戦が始まり、両地区が遮断される。初めは戦争に昂揚感を覚えるターレクだったが…。
【解説】
15年間も続いたレバノン内戦を背景にした、作者の自伝的要素も強い戦争青春ドラマです。
宗教が混在する、レバノン社会の文化的多様性が映し出されるとともに、主人公の目を通して戦争の生々しい恐怖が語られます。
【物語】
ある日、パレスチナ人のヤーセルとレバノン人のトニーが、住宅の補修をめぐり諍いを起こす。
トニーの放った“侮蔑”のひと言は2人の対立を深め、法廷に持ち込まれた決着はやがて国を巻き込む騒乱へと発展してゆく…。
【解説】
昨年の大ヒット作です。宗教のモザイク国家レバノンが抱える社会問題が、中東のみならず、分断が進む世界のあらゆる場所を照射します。
民族、宗教、国籍を越えた人間の尊厳について考えさせられる社会派ドラマです。
【物語】
イラク北部の都市キルクーク。家を失ったクルド人たちは、スタジアムの中で暮らしていた。
ヘリンに淡い恋心を抱くクルド人青年のアスーは、地雷で片足を失った弟のため、民族対抗の少年サッカー大会を計画するが…。
【解説】
かつてフセイン政権下で苛烈なアラブ化政策が進められた街を舞台に、反戦の願いを込めて作られたクルド人監督の作品です。
サッカーが民族宥和の象徴として描かれますが、モノクロに近い映像が現実を浮き立たせます。
【物語】
トルコから欧州に移り住んで半世紀。クルド人一家の女主ファトマは、故郷の伝統を守りながら、夫や子どもたちとともにウィーンで暮らしていた。
そんな彼女の息子のもとへ、東トルコの村からアイシェが嫁いでくる…。
【解説】
ウィーンで育ったクルド人監督による、悲劇的な家族ドラマです。
精緻な演出によって、家父長制の歴史の中に生きる女性たちの困難と、欧州の移民社会に共通する、アイデンティティーの板挟みの苦悩が描かれています。
【物語】
N.Y.のブルックリン。同じ学校の新任教師として出会った、正統派ユダヤ教徒のラヘルとムスリマのナシーラは、ある授業をきっかけに友人関係になる。
2人には、“お見合い結婚”を控えているという共通点があった…。
【解説】
現代のアメリカ社会で、それぞれの信仰や伝統にしたがいながら、自分なりの生き方を探す2人の女性の物語です。
彼女たちの“壁”を気にとめない友情と、幸せや物事の価値観は自分で決めるという姿勢が共感を呼びます。
【物語】
ヨルダン川西岸地区の街に住むパレスチナ人教師のラヤルは、
虚偽の告発によってイスラエルの刑務所に収監されてしまう。
まるでパレスチナの縮図のような牢獄のなかで、身ごもっていた彼女はやがて子どもを産むが…。
【解説】
イスラエルの刑務所で出産した女性の実話をモチーフに、
長年続くパレスチナの理不尽な現実を描いた社会派ドラマです。
苛酷な状況下で我が子を育てる主人公と女性たちの抵抗の物語が、
かすかな希望を見せてくれます。
【物語】
父親を急に亡くしたコプト教徒のハーニーは、経済的理由から無償の公立校に転入するものの、
周りが全員ムスリムのため素性を隠すことに。
ハーニーは持ち前のバイタリティで少しずつ学校になじみ、親友もできるが…。
【解説】
シリアスな題材をコミカルに描いた学園コメディです。
言いにくい話を切り出す際の表現である原題の「ラー・ムアーハザ」どおり、
見た目は子ども映画でありながらエジプト社会のデリケートな問題に切り込んでいます。
【物語】
ケーララ州の農村に暮らす、アブとアイシュンマの夫婦。
2人はマッカへの巡礼ハッジのため、つましく資金を蓄えていた。
息子は中東に移住したまま帰ってこない。アブは街の旅行会社まで、パスポートを作りに行く…。
【解説】
ムスリムの老夫婦を主人公にした、信仰についての物語です。
彼らと善意ある人々との交流を通じ、宗教を超えた人間同士の愛と宥和が謳われます。
映像や音楽も美しい、カザン国際ムスリム映画祭グランプリ受賞作です。
【物語】
1947年、アーグラ。
ミルザー家の兄ハリームは家族を連れてパキスタンに移住するが、弟サリームの一家はインドに留まる。
愛しあっていた両家の娘と息子も離れ離れになり、サリームの商売はしだいに難しくなる…。
【解説】
印パ分離独立を題材にした文芸ドラマです。
古都アーグラを舞台に、あるムスリム一家がインドに留まったがゆえに苦悩する姿を描きます。
生まれ育った土地にこだわる主人公の生き様が凛々しい、インド映画の名作です。
【物語】
科学が大好きな小学生のアキラは、自由研究のため、天文学者の祖父に研究所の大望遠鏡で星を見せてほしいとお願いする。
祖父はクルアーンをアラビア語で朗誦できるようになることを条件に、アキラにそれを許すが…。
【解説】
“イスラームと科学”をテーマに、バンドゥン工科大学のサルマン・モスクが製作した子ども映画です。
イクロとは、クルアーンをアラビア語で詠む練習法を指します。
子どもたちの学びと成長が温かく描かれる作品です。
【物語】
かつて難民だった、アフガニスタン初の女子ボクシングチームに所属するボクサー、サダフ・ラヒミ。
彼女は2012 年のロンドン五輪出場を夢見て学業と練習の両立に励んでいたが、やがて世間から非難されるように…。
【解説】
女性のスポーツ参加がいまだ難しいアフガニスタンで、ボクシングに夢を懸ける一人の少女を追いかけたドキュメンタリーです。
礼拝を欠かさず、アフガン女性の希望となるべく境遇に立ち向かう少女の姿が胸に迫ります。
【物語】
2010 年ヘラート、ブルカについて語る女性。
2009 年カブール、デモ行進し、男たちの非難を浴びる女性たち。
2011 年マザリシャリフ、愛のために死んだ女性詩人に自らを重ねる、12 歳で結婚した若き女性…。
【解説】
アフガニスタンの三つの街で、女性たちの声を記録した作品です。
宗教以前に保守的な男性優位社会における、女性の困難が描かれます。
モーターラマとは女性の呼称として使われる、尊敬の意が込められた口語表現です。
【物語】
上の村の気象観測所に勤めるロシア人キリルは、近く下の村の青年と結婚する助手のニルファに観測所を託して、故郷に帰りたがっていた。
しかし、ある日突然二つの村の間に国境ができ、人々の往来が遮られてしまう…。
【解説】
ソ連崩壊からの独立後、初めて製作されたタジキスタン映画です。トゥルー・ヌーンとは、太陽が真上に来て影がなくなり、人と太陽が一つになる平等な時のことを表します。国境の意味について考えさせられる作品です。
【物語】
五人姉妹の末っ子パサンドの婚約式の準備が始まる。
海外に暮らす新郎は不在のままだが、姉たちは祝宴を開くため大忙し。
パサンドの結婚に反対していた伯父もようやくそれを受け入れ、黙々と角砂糖を作っていたが…。
【解説】
婚礼の祝いに集まる大家族の悲喜こもごもを描いた群像劇です。
様々な人生を背負った人々の心の機微が丁寧にすくいとられ、胸に沁みます。
イランの伝統的家屋や家庭料理など、豊かな色彩にもため息がもれる逸品です。
【物語】
イラン・イラク戦争中。
クルドの村のムスリム一家のもとに、戦死した息子の柩が届けられるが、遺体には割礼の痕がない。
さらには隣のクリスチャン一家が、それは自分たちの息子ではないかと疑い始め村は大騒動に…。
【解説】
イラン・イラク戦争の際に頻繁に起きたという、遺体の取り違えをめぐって起こる騒動を描いたコメディです。
イスラームで火葬は禁じられており、タイトルは人間を一瞬で灰にしてしまう戦争の愚かさを表現しています。
【物語】
両親は、1973年にトルコ東部の村で結婚。その後ベルリンに移住し、私が生まれた。ある日、祖母は私たちがクルドであることを明かす。私は祖父母がなぜそれを隠していたのかを知るために、カメラを回し始める…。
【解説】
女優でもある移民二世の作者が、自らの家族を題材にし
たドキュメンタリーです。長年秘めてきた祖父母の人生や、クル
ドのアイデンティティーが優しく掘り下げられます。欧州に暮ら
すある移民一家のポートレートです。
【物語】
戦時下のシリアの山村。村人たちは毎日、みんなで紅茶を飲みながらラジオを聴いていた。そんなある日、ジャマールにもついに召集令状が届く。恋人のアジーゼは戦地の彼のため、ラジオにリクエストを出すのだった…。
【解説】
緑美しい山村を舞台にした反戦悲喜劇です。にぎやかな
人間模様のなかに、神の名の下で分け隔てなく暮らす人々の営み
を踏みにじる、戦争への怒りが込められています。シリア内戦を
彷彿とせずにはいられない作品です。
【物語】
些細なことを理由に三人目の妻フーダと三度目の離婚をしたハッジ。
彼はすぐに後悔するが、再々々婚はフーダが一度誰かと結婚して別れない限り許されない。
ハッジはフーダとよりを戻すため、彼女の夫探しを始める…。
【解説】
もともとイスラームでは戦争未亡人救済の措置である、“一夫多妻”を題材にしたコメディです。
ルールに縛られる憐れな男とは対照的に人生を楽しむ女性の姿を活き活きと描き、90年代にモロッコで大ヒットしました。
【物語】
戦争で荒廃した、ムスリムとクリスチャンが半数ずつ暮らすレバノンの小村。
女たちは共に仲良くしていたが、男たちは事あるごとに争いを始め手に負えない。
平穏な生活を守ろうと、女たちはあの手この手と策を練る…。
【解説】
『キャラメル』の監督が贈る、男たちの争いを止めようと女性たちが共闘する歌や音楽満載の悲喜劇です。中東=イスラーム一色というイメージと異なるレバノンならではの作品で、他のアラブ諸国でも大ヒットしました。
【物語】
2011年1月25日、革命下のエジプト。
30年におよぶムバーラク政権打倒を叫ぶ人々で、街はあふれていた。
友人と共に刑務所から逃亡した名もなき男は、真実を映すある動画を胸にカイロの貧困地区を彷徨うが…。
【解説】
エジプト社会の周縁から革命を描く人間ドラマです。
クルアーン詠みが即興で唄う民謡やアラブ歌謡が効果的に使われ、“敷物と掛布”とは一つの音楽ジャンルを表します。
緊張と詩情がない交ぜとなった美しい映像詩です。
【物語】
親元を離れ、アヌはマドラサに入学するが、厳しい寄宿生活になかなかなじむことができない。
一方、家では病弱な妹の治療をめぐり、両親の間で溝が深まっていた。やがて彼らの村にも独立戦争の波が押し寄せてくる…。
【解説】
バングラデシュ独立戦争前夜を背景にした、ある家族の物語です。
暗い時代の中でも子供たちの姿が叙情味豊かに描かれ、ベンガル地方に伝わる“バウル音楽”が心に深く響きます。
カンヌ国際映画祭・批評家連盟賞受賞作です。
【物語】
父、弟、妹と暮らすフージャンは、家計を助けようとアイスキャンディー売りを始めるが、
家を留守にしたある晩、父が列車事故に遭ってしまう。
やがてフージャンは旅先で出逢った若者たちと、白米の密輸を始めるが…。
【解説】
ムスリムが多いマレーシア国境付近を舞台に、貧しい一家を支える主人公が、
闇仕事を通じて成長する姿をみずみずしく描きます。
緑豊かな自然や列車からの風景も目に沁みる、タイ映画の名作と謳われる青春ドラマです。
【物語】
バンコクで働く仏教徒のジューンは、タイ南部出身のムスリム、エイクとの結婚を機にイスラームに改宗する。
生活に根づくイスラームの教えと慣習を学びながら、ジューンはやがてエイクと共に南部の島へ移住するが…。
【解説】
結婚と改宗という二つの決断を果たした女性の、新たな人生を描くロード・ドキュメンタリーです。
彼女の迷いや歓びから結婚とは何かについても考えさせられ、やがてぎこちなくも素朴な夫婦の愛の旅路が見えてきます。
【物語】
盲目のイスラーム修道僧とその孫娘が、30年に一度だけ開かれるという集会を目指し、砂漠を歩いている。
修道僧は孫娘にある王子の物語を聞かせていた。様々な出逢いと別れを繰り返しながら、2人は旅をつづける…。
【解説】
アラブからペルシャ、そして中央アジアを舞台に、“アラビアンナイト”さながらの世界が展開する幻想的な物語です。
スーフィー音楽のほか様々な民族音楽が修道僧と孫娘の旅路を彩り、時間の概念を忘れさせてくれます。
【物語】
ある日、ナワブは街でニカーブから一瞬だけ顔を見せた女性に一目惚れする。
彼女を忘れられない彼は縁談を断り、親友のアスラムが代わりに結婚するが、なんとその相手こそ、ナワブが恋焦がれる女性ジャミーラだった…。
【解説】
インド映画の巨匠グル・ダット主演の悲恋メロドラマです。
イスラーム文化花咲くラクナウを舞台に、勘違いから始まる三角関係の行方を歌や踊りも満載に描きます。
ヒロインの美しさを讃える歌も当時大ヒットしました。
【物語】
敬虔なムスリムの少年ラフマンは、村で唯一のカトリック教会にあるマリア像に、見知らぬ母の面影を見る。
老神父と仲良くなったラフマンは、神父が事故で倒れると、盲目の友人と共に彼の弟を探す旅に出るのだった…。
【解説】
幼い子供を主人公にした、懐かしいタイプのイラン映画です。
ムスリムの少年とカトリックの神父の素朴な交流に心が洗われ、子供たちの世界には“境界”がないことを教えられます。小さくも大きな示唆に富んだ物語です。
【物語】
タミルのヒンドゥー女性ミーヌは、夫の元に帰るバスの旅でベンガル出身のラジャと出逢う。
ところが道中、ヒンドゥー対イスラームの暴動に遭い、暴徒を前に彼女は、ムスリムと知ったラジャのことを夫だと嘘をつく…。
【解説】
宗教も出自も異なる男女が束の間の夫婦を装う物語です。
危険な道行きの中で、いつしか惹かれあう2人の姿に宗教融和への祈りが込められています。
深刻な題材を描きつつも胸をしめつける、切ないラブストーリーです。
【物語】
共にミュージシャンの兄弟。しかし、内向的な弟が過激な思想に染まり、兄は弟を気遣いながらもアメリカへ留学する。
ロンドンに住む従妹マリアムは英国人の恋人と結婚する予定だったが、それを快く思わない父親に…。
【解説】
過激な原理主義とリベラルなムスリムの軋轢や、アメリカのイスラーム嫌悪など、様々なテーマをパワフルに描いた社会派ドラマです。
娯楽性も兼ね備え、本国では歴代興行記録を塗り替える一大社会現象に発展しました。